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第3話 排除

Author: 雨音休
last update Petsa ng paglalathala: 2026-04-10 14:55:09

ロッジのような一室。木造りの天井と丸太で出来た壁。そこのベッドにユウマは腰掛けていた。

ここがゲームの中らしい。

顔の前にはステータス画面のような半透明の青いボードが浮かんでいる。

システム音声が響いた。

「プレイヤー様。VALORIUMオンラインの世界へようこそ!」

「あ、はい」

「まず、プレイヤー名を決めてください」

「トウマで頼む」

彼の本名は冬野悠馬とうのゆうまである。

「トウマ、その名前は使用できます」

「良かった」

「次にゲーム内職業を選んでください」

画面には様々な種類のジョブが並んだ。

そして右上には特別コード入力の文字。そこをタップして、暗記していた英文字を打ち込んだ。

果たしてどんなギフトがもらえるんだろうか?

チートスキルの予感に胸が高鳴る。

画面に現われたのは、とんがり帽子にローブの男。

システム音声が告げる。

「おめでとうございます。貴方の職業はコントロールメイジです」

「え?」

トウマの両手に安っぽい木の杖が現われる。

勝手にジョブが決まってしまっていた。これが特別コードのプレゼントという事なのだろう。コントロールメイジは強いのだろうか?

「次に、ビジュアルを作成してください」

操作をして、トウマは格好良いアバターを自分なりに作って行く。

青の短髪、目も青色。身長は高め。体格は細マッチョ。爽やかふうにアレンジをした。

これで良し。

「……普通のVRだな」

トウマが着ている服は白のシャツにデニムの膝丈までの半ズボン。ちょっとダサい初期装備である。だが文句を言っても仕方無いだろう。

トウマは立ち上がった。

思わず気分が高揚する。

題して自分探しの旅。

違う。

とりあえずヴァルを稼いでみたい。

「次に、使い魔を授けます」

ふと、周囲に声が起こった。

「貴方の助けになりたいから。

――人助けに何か理由が要りますか?」

光が弾けた。

空間が揺らいで、茶髪ロングの女の子が現われる。

茶色い猫耳にふさふさとした尻尾。右手には剣。左手は腰に当てている。身長は140cm程度と言ったところか。ピンクの服を着ていた。

――使い魔、猫の亜人。

そいつが喋った。

「貴方がご主人様ですか?」

「あ、ああ。そうみたいだ」

「お名前は?」

「トウマだ」

「はい、トウマ。では、私の名前を教えてください」

「お前の名前?」

あごに右手を当てて考え込んだ。

少し考えてから口を開く。

「俺が冬だから。お前は夏、つまりウミだ」

「ウミ~? 分かりました。私はウミなのです!」

ウミが耳を垂れて、尻尾をゆらゆらと揺らす。口から覗く八重歯がちらり。チャーミングなエクボが浮かんでいた。

「よし、ウミ、一緒に冒険に行ってくれるな?」

「あいあいさっ」

二人で室内を出て、ロッジを後にする。

開きっぱなしのステータス画面からまた音声が起こった。

「チュートリアルモードへ移行します」

ドンという音がして上空に文字が浮かぶ。

――ゴーレムを排除せよ

トウマは辺りを見回した。ロッジの周囲は草原に囲まれている。背後には山へと続く道があった。そして正面の向こうには灰色のゴーレムが二体いて、のしのしと歩行をしている。ゴーレムのいるさらに先には崖がある。

ステータス画面をいじって、トウマは自分のスキルをチェックした。三つある。

グラヴィティライン(動きを封じる)。

リダイレクト(攻撃方向を変える)。

フィールドハック(地形利用の最適化)。

表示された文字は、ゴーレムを排除せよ、である。

……撃破では無く排除か。

なら倒す必要は無い。

配信の欄から配信開始をタップする。すると空中にドローンが現われて、トウマの背後上空に浮かんだ。視聴者数はゼロ。

……配信補正バフがかかるのか。

視聴者がメッセージを送信したら、コメントが空中を流れるのかもしれない。

クローズと言うとステータス画面が消える。

隣にいるウミがトウマの腕の袖を引っ張った。

「トウマ、どうやって倒すのです?」

「簡単だ」

ゴーレムの先をトウマは指さした。

「崖があるだろ?」

「はい。ありますね」

「落とすんだ」

「え? それ、面白く無くないですか? せっかくのゲームですし、戦いましょうよ!」

「ウミ、勝てば良い」

二体のゴーレムへと向かってトウマは歩き出す。

一体がこちらをターゲットし、のしのしと歩いてきた。

「ロックオンアサルト」

ゴーレムが唱えた。素早いタックルを繰り出す。

「あっぶね!」

トウマは左に避けて回避した。

「来い! でかぶつ」

そして崖際へと走り、そこで立ち止まる。

ゴーレムがどしどしと歩いてきてまた唱えた。

「ロックオンアサルト」

「よっと!」

右手側に柔道の前回り受身を取る。ゴーレムは崖から落ちると思ったのだが、ぎりぎりのところで立ち止まっていた。体型の割に器用である。

そこでトウマは唱える。

「グラヴィティライン」

トウマの杖から伸びた青黒いロープがゴーレムの足下に巻き付いた。ゴーレムは身動きできないようで、声も上げずにそのままじっとしている。

敵の動きを封じるスキルである。なるほど、制御の魔法使いコントロールメイジにはお似合いのスキルだ。

トウマはまた唱える。

「フィールドハック」

瞬間、視界が赤く染まった。英文字が現われる。

Enemy ground.

Make it slippery.

Is this okay?

トウマはゆっくりと二度頷いた。

「OKだ」

瞬間、ゴーレムが足を滑らせて崖へと転落していく。下で衝突音が鳴った。

一体目排除である。

……これは使える。

フィールドハック……地形そのものを操作するスキルか。

もう一体のゴーレムの方に顔を向けると、ウミが一生懸命に戦っていた。彼女が唱える。

「フレイムウェポン!」

ウミの頭に赤い剣のマークが灯る。攻撃力アップのスキルだろうか?

ウミは一生懸命にゴーレムを斬りつける。しかしゴーレムの反撃に合い、やがて防戦一方になった。

「このっ! こいつ、強いですぅ」

トウマはため息をついて、ウミの戦いをじっと見つめる。

そこで気づいた。

……HPMPバーが見えるのか。

ウミが叫ぶ。

「トウマ! 助けてくださいっ!」

「仕方無いな。グラヴィティライン」

トウマの杖から青黒いロープが伸びる。ゴーレムの足に巻きつき動きを封じた。

「ほら、これで倒せるだろ?」

「それ、ズルく無いですか?」

ウミの尻尾がモフモフと揺れる。両手の剣でゴーレムをメッタ斬りにした。やがてゴーレムはHPバーを無くし、その場に崩れて消える。

二人の頭上に文字が浮かんだ。

――クエストクリア

トウマ

【評価A】

【+520ヴァル】

称号

『非破壊排除』を獲得

ウミ

【評価C】

【+120ヴァル】

ウミが嘆くようにこぼした。

「どうして私は評価Cと低いんですか? 称号も無いですぅ」

「さあ、それは俺にも分からんが、倒し方で評価が変わるのか?」

「私の倒し方は効率が悪かったのですか?」

「まあ、崖に落とした方が楽だよな?」

「トウマ、それつまんないですぅ」

「つまらないと言われてもな」

「……ちゃんと戦った方が楽しいですぅ」

ウミの耳が垂れる。しょぼんとして肩を落とした。地面に剣でバツ印を描いている。

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Mga Comments (2)
goodnovel comment avatar
anno.lnt_3
ウミちゃん可愛い...相変わらず世界観素敵です
goodnovel comment avatar
エチカ
ウミ、かわいいです(〃ω〃)...
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